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シャーロット・コットン「写真は魔術ーアートフォトグラフィの未来形」

皆さん今日は、今日は2024年12月3日、東京は快晴。昨日は遅くまで仕事だったので、気分転換に都内の喫茶店でブログを書いています。まだ冬の厳しい寒さは感じません。天気予報によると7日以降から本格的に寒くなりそうです。ニュースでは色々、流行していると報じられています。皆様も引き続き体調管理にお気をつけください。年末まで、積極的に学びながらブログ更新を頑張っていきます。さて、今日は写真の話。シャーロット・コットン「写真は魔術ーアートフォトグラフィの未来形」を読んでみました。

この本は2015年9月に出版されている本です。定価5,500円と高価ですが、フルカラー印刷で写真表現の新しい流れになりつつある作品群がまとめられているので、購入して読んでみました。西洋美術史は基本的には、絵画と彫刻の歴史で始まりますが、ポップアート時代の頃からでしょうか?写真作品も徐々に出現してきました。個人的にはデヴィッド・ホックニーの写真作品は好きです。

さて、時代は変わり2015年出版の本なので、2024年から数えると9年前、2010年以降に制作された作品に絞った作品の話になります。ほぼ作品集みたいな構成で、テキスト部分は少ないのであっという間に読み終わります。が、、、結構難解な文章です。全部理解できたとは到底思えないので、暫くしたら再度、読み直してみます。。。

※以下、まだ頭がスッキリしていない状態でのメモです。

2B Channelさんの、北桂樹「スネ夫の髪型問題」から考える現代写真・修正再アップでも言及されていますので、念の為紹介しておきます。

結論

完璧に理解はできていませんが、重要なポイントは「Photoshop(フォトショップ)」「写真の物質性(materiality)」の2つです。冒頭の文章が難しいのは恐らく新しい、最先端の表現の紹介なので、言語化するのは難しいのかもしれません。

シャーロット・コットン「写真は魔術ーアートフォトグラフィの未来形」は、80人以上のアーティストによる作品とステイトメントを集めている本で、コンテンポラリー・フォト・アートという初めて聞いた言葉で括られている分野に特化しています。現代アートと写真が融合したような分野ということみたいです。著者の書籍のテーマに対する解説はありますが、作品自体1点1点の解説はありません。

著者のシャーロット・コットンによると、今を生きる現代社会の状況を反映しながらも、既成概念になってしまったクリエイティブの形をアップデートし、見直す機会を与えてくれている新しい作品群の紹介することがこの本の意図のようです。

著者は本の中で、写真が持つ伝統について再考し、その上で現代写真のレパートリーが持つ新しいスキルを使っています。

写真が、カメラというツールや機材によるテクニック、印画紙等の素材、物質の化学反応(現像)、Photoshop等のソフトウェアなどの足し算の結果として出来上がるものであるという、平凡な定義から解放されている作品です。(今までの常識や手法で作られてはない、新しい作品です。)

この本の魅力

4ページで言及されていますが、この本の魅力は「現代写真」の魅力を考える時、アートの中における「写真」の現在の状況と、文化的地位を、ある一つの視点から考えていることです。

その視点は「写真の物質性」そして、「写真の物質性」が経験されうる方法、またそれが表し、促すものが極めて自由で、様々な事を包括しながら拡張し続けているという視点です。

アートや現代のイメージ文化をどのように「物質化(マテリアル化)」するべきか、を重要なポイントとして捉えて、紹介作品が選定されています。

また、イメージとしては反復とコラージュ、レディ・メイドが現在有効な概念であるようだとも言及されています。ここもポイントです。写真史のみならず、西洋美術史の視点を持って評価しています。

日本の写真の世界は、僕の勉強不足のためか評価基準が分かりずらいです。木村伊兵衛写真賞の評価基準もイマイチ分かりません。日本独特な何か写真の価値みたいなものがあるのでしょうか?今後の課題として学んで行こうと考えています。

その点でシャーロット・コットンのこの本での評価・選定基準はわかりやすく、理解しやすいです。ロジカルかつ社会の状況、西洋美術史を参照しながら解説してくれるので、明瞭です。でも、この本の冒頭のエッセイの文章は難解ですが。。。

Photoshopについて

また、Photoshopの影響についても考えられています。Photoshopが写真に新しい扉を開いたと好意的に捉えています。フィルム時代から写真を撮影していた方はPhotoshopで写真データを修正したり改変したりする事に否定的な意見を持つ方が多いですが、この本では好意的に新しいものととして紹介されています。

Photoshopは「ソース(原典)」、「オリジナル(本物)」という概念が消失させました。でも、それが写真表現の新しい扉を開いたことになります。Photoshopは写真データを自由に改変していく事が可能なので、カメラが映し出した像(イメージ)は本物ではなくなってしまいました。作者がPhotoshopで修正、改変していないと主張しても、それを証明する事が不可能になったからです。

※最近はカメラ内デジタル署名技術が開発され改変されていない証明が機械的に可能になりつつあります。ご注意ください。

従来の写真マーケット

昔は、作品の唯一性や著名性を第一に捉え、観客に「この作品は〇〇さんの作品だ!」と一瞬で分かる作風が求められていました。が、それが制約になっていたのも事実です。

この保守的な見解が、写真表現の可能性を抑制してきたと述べられています。

フィルムからデジタルへの過渡期について

Photoshopによる大幅な修正や加工には否定的で、フィルム時代にしかできなかったことのみ、デジタルで加工していいと信じている人がいました。

デジタル写真は、愛すべきアナログ写真のクラフトマンシップという美しい遺産を模倣できると信じられており、その居場所が必要だとも考えられていましたが、所詮、フィルム風です。デジタルはデジタルなのです。そこに気がつきはじめたアーティスト達がいたのも事実。

デジタルカメラ、フォトショップ、インクジェットプリンターといったデジタルツールが2000年代以降に写真家達に与えた衝撃と影響は大きかったのです。

Photoshopをメディウムとして捉える新しさ

Photoshopというソフトウェアは、写真業界や広告の分野では、自由かつ理想的なイメージの作成を簡単に手助けしてくれる必須のツールとなっている一方、写真家・アーティストにとっては「カメラで撮影された写真は人間の単眼の視界を模倣するだけの活用」から、写真を新しい可能性を持つ何かへ変化させていった。それが現代の写真表現において各アーティストが模索しながら作品制作を行っている。Photoshopというソフトウェアそのものが、メディウムの役割を担っている。

現代写真における、アナログ技法

アナログの手法をあえて誤用し、本来の目的とは違った使い方や、間違った方法でアナログ的な手法を使用している作家もいる。アナログ手法を否定し駆逐しようとしているのではなく、新しい表現の実現のためにアナログ手法も採用されているので、その機能と意味合いや用いられ方が変わっていっている。

シャーロット・コットン

そもそも、著者のシャーロット・コットンについて知る必要があります。キュレーターであり、写真に関するライターです。コットン氏は、2007年から2009年まで ロサンゼルス郡立美術館(LACMA)のウォリス・アネンバーグ写真部門の学芸員兼部門長を務めています。

彼女はまた、英国の国立メディア博物館のクリエイティブディレクター、国際写真センターの 新しい博物館とイベントスペースである250 Boweryのレジデントキュレーター、ロサンゼルスのMetabolic Studioのレジデントキュレーターを務め、そこではジュディ・シカゴ、シーラ・レヴラン・デ・ブレットヴィル、アーリーン・レイヴンによって設立されたウーマンズ・ビルディングの遺産を祝うプログラムに参加しました。彼女は現在、カリフォルニア州リバーサイドにある カリフォルニア写真博物館のレジデントキュレーターです。
また、現代写真論という本が日本でも写真愛好家の間でよく読まれています。(出典:Wikipedia

まとめ

冒頭のエッセイ箇所は短いですが、難解な部分もあるので、色々メモしながら考察しながら読んでみました。基本的にはPhotoshopを使用したり、フィルム時代とは違ったデジタルツールを用いた作品を作る新しい時代がやってきたという、検証・考察と作品紹介の本だと思います。

シャーロット・コットンのエッセイの後は作品紹介の章になり、80名以上の作家の大量の作品が紹介されています。千葉県立美術館で鑑賞したNerholさんの作品も紹介されていました。気になる方は本を購入して読んでみてください。

フィルムからデジタルへ移行して行った中、やはり写真とは何か?議論したり、考えた方も多いのではないでしょうか?カメラの登場で絵画とは何か?考えられ、セザンヌや印象派が登場したような大きな流れの中に今ある気がしています。今後の写真表現がどのように変化していくのか大いに楽しみです。AIによるイメージを使用しての作品については、この本では言及されていませんが、Photoshopが一つのメディウムとして認めるなら、AIも一つのメディウムとして認めざるおえない状況を忘れてはなりません。写真表現は混沌とした状況になっていますね。

書籍を読んだ後に色々気になりYoutubeで検索し、以下のリンクのYoutube動画もみてみました。何故かブログに埋め込めないのでリンクを辿ってご覧ください。こちらの動画では結構、批判的ですが人それぞれの意見があります。そちらも含めて面白かったです。

「Plot Art School/現代アートスクール」チャンネルの動画になります。
https://youtu.be/-09Tzm6d8FM?si=457XQmXpZFurgEnb

アルテ・ポーヴェラ

1960年代末から70年代初頭にかけてイタリアで興った芸術運動。日本語で「貧しい芸術」の意味。イタリアの数多くの芸術家たちが参加し、イタリア国内のみで興隆したアルテポーヴェラですが、他国の美術にも少なからぬ影響を与えました。中心メンバーのM・メルツ、J・パオリーニ、G・ペノーネ、M・ピストレットらは、いずれも新聞紙やセメントといったチープな日用品を立体作品の制作素材として活用する共通項を持っています。


ヨーロッパのアルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)は、ミニマリズムと共鳴しながら「豊かさ」に対して「貧しさ」を表現していく。

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