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『現代美術の流れ: 1945年以後の美術運動 著)エドワ−ド・ル−シ−=スミス』を読みます

皆さんこんにちは。今日は2024年12月18日(水曜日)午前中です。雲が少し多いですが今日も東京は快晴です。今年は残り13日です。後、美術館に2回行く予定です。

さて、以前注文していた『現代美術の流れ: 1945年以後の美術運動 著)エドワ−ド・ル−シ−=スミス』が届いたので読み始めます。日本では日本語版が1986年に出版された、今から38年前の本になります。(Amazon.co.jpで古本がリーズナブルな価格で購入できます。)

まずは著者の「エドワ−ド・ル−シ−=スミス」さんをWikiで調べます。

エドワ−ド・ル−シ−=スミス Edward Lucie-Smith

ジョン・エドワード・マッケンジー・ルーシー・スミス(1933年2月27日生まれ)は、エドワード・ルーシー・スミスとしても知られ、ジャマイカ生まれのイギリスの作家、詩人、美術評論家、キュレーター、アナウンサーです。彼はこれらの分野で非常に多作で、100冊以上の本の執筆や編集を行っていますが、1960年代後半頃から徐々に彼の主題は文学中心から芸術中心へと移行していきました。

キュレーターでもあります。さらに、リバプールのウォーカー美術館でのピーター・ムーアズ・プロジェクト3件、ニュー・ブリティッシュ・ペインティング(1988-1990年) 、ニューオーリンズ美術館での回顧展2件など、数多くの美術展のキュレーションも手がけている。バーモンジー・プロジェクト・スペースのキュレーターでもある。

この書籍の原題は『Movements in Art since 1945』で1969年に出版されています。

こちらが昔出版された英語版の表紙みたいですが、下の表紙で英語版ですが2020年にも引き続き出版されています。日本語版はすでに絶版状態で、古本でしか入手できないようです。図書館でも借りれそうな雰囲気はありますが、リーズナブルな価格で販売されているのでAmazon.co.jpを見てみてください。

こちらの改訂版『Movements in Art Since 1945 (World of Art) April 14, 2020』は残念ながら、日本では未発売みたいです。以下、Amazon.comでの紹介文です。

第二次世界大戦終結以降の芸術の古典的な入門書である「1945 年以降の芸術の動向」は、過去75年間にわたるあらゆる形式のメディアを通じた芸術の歴史を語ります。

2001年以来初めて改訂され、再設計されたこの戦後の視覚芸術の標準的な入門書では、抽象表現主義から現代までの運動、傾向、アーティストを検証します。

エドワード・ルーシー・スミスは、並外れた明快さと強い物語性で、数十人のアーティストの作品を解明し、芸術界が社会、政治、環境問題とどのように関わってきたかを明らかにしています。

この本には、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを含む世界中のポップアート、コンセプチュアルおよびパフォーマンス作品、新表現主義、ミニマリストアートなど、芸術界における主要な発展が詳細に取り上げられています。

2000年以降の芸術に関する新しい章には、バンクシーやアイ・ウェイウェイの作品、およびロシアと東ヨーロッパの芸術の最近の傾向についての議論が含まれています。

1980年代のニューヨークのグラフィティから中国の現代絵画まで、主要な芸術作品の約 300点の画像を掲載したこの「1945年以降の芸術の動き」の最新版は、21世紀の芸術と同様に、その影響力はグローバルです。

<ここから、読み始めます(以下、備忘録です)>

難しい本なのかな?と不安になりましたが、基本的に元の英語版を日本語に翻訳しているので、用いられている言葉や文体が硬いので読みづらさは感じますが、内容は理解しやすいので一安心です。それでも知らない時代背景や、知らない作家が多数登場するので調べながらPCでデスクトップ上で資料をまとめながら読む事になります。このブログには重要事項のみ記述していきます。(細かい部分はPCで資料を保管します。)

抽象表現主義の時代から始まります

デュシャンから解説が始まるのかな?と勝手に想像しながら読み始めましたが、第二次世界大戦を基準に抽象表現主義の時代から話が始まります。

個人的に、注目すべき新しく知った事

こちらは、新しく学んだことになりますが、本書の9ページの、
1.「抽象表現主義」は「シュルレアリスム」に根ざしている。
2.「アッサンブラージュ(寄せ集め)」「ポップ・アート」は遡ると「ダダ」にたどり着く。
3.「オップ・アート」「キネティック・アート」はバウハウスで試みられた実験にもとづいている。
4. 「ミニマル・アート」は「ダダ」と「バウハウス」の影響を結びつけている。
5. 「新表現主義」の起源は「表現主義」です。
※表現主義は感情や内面的な動きに焦点を当て、外的な現実から感情的な解釈を優先します。

の記述がありますが、1番の「シュルレアリスム」が影響を与えたとされる「抽象表現主義」です。これはビックリました。知らなかったです。まずは、シュルレアリスムと抽象表現主義の関係に注目したいと思います。

そこで紹介されている重要な人物はアーシル・ゴーキーです。

アーシル・ゴーキー

芸術家と母親 c.1926-1936

Portrait of Ahko (1937)

無題 (1941)

he Betrothal I (1947)
婚約 I(1947)

後に「抽象表現主義」に影響を与えたアーティストとして重要な人物は「アーシル・ゴーキー」です。アーシル・ゴーキーは、(Arshile Gorky)は、20世紀のアメリカの画家で、特に抽象表現主義とシュルレアリスム(超現実派)に深い影響を与えたアーティストです。彼は本名をヴァルタント・トムリアン(Vartan Tomurian)といい、アルメニア人の家庭に生まれ、非常に波乱に満ちた人生を送りました。彼の作品はしばしば、内面の苦しみや個人的な歴史的背景、失われた愛と過去を反映しています。

ゴーキーは、作品において非常に個人的で感情的なテーマを扱いました。彼の絵画は、具象と抽象の間を行き来するスタイルが特徴です。初期には形態的に具象的なモチーフを描きましたが、次第にその形が崩れ、色彩や線で表現された感情的な抽象表現へと変化していきました。

彼の作品には、夢や幻想的なイメージが多く含まれており、これはシュルレアリスム(超現実派)の影響を色濃く反映しています。また、ゴーキーの作品には深い個人的な感情が込められており、特に彼の母親への強い思いと喪失感が表現されています。たとえば、ゴーキーが描いた有名な作品『死んだ母と子供』は、このテーマの象徴的な表現です。

アーシル・ゴーキーは、生前は大きな注目を浴びることはありませんでしたが、後の抽象表現主義やシュルレアリスム(超現実派)のアーティストたちに多大な影響を与えました。特にジャクソン・ポロックやマーク・ロスコといったアーティストたちにとって、ゴーキーは重要な先駆者となったのです。彼の作品は、その感情的な深さと独創性から、今日では高く評価されています。ゴーキーの作品は、現在も世界中の美術館やギャラリーで展示され、彼の人生と作品は、20世紀美術の中で重要な位置を占め続けています。

アーシル・ゴーキーは何故、抽象表現主義のアーティストに影響を与えたのか?

アーシル・ゴーキー(Arshile Gorky)が抽象表現主義のアーティストに影響を与えた理由は、彼の革新的な表現方法と芸術的な探求が、特に20世紀の前衛的なアーティストたちに深いインスピレーションを与えたからです。以下のいくつかの点が、ゴーキーが抽象表現主義に与えた影響を説明する要因です。

1.形態と色の自由な使用

ゴーキーは、絵画における形態と色の使い方において非常に実験的で自由でした。彼の作品は、自然の形態を解体し、それを抽象的なビジュアル言語に変換することに重点を置いています。このアプローチは、後の抽象表現主義のアーティスト、特にジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングなどに大きな影響を与えました。ポロックやデ・クーニングは、ゴーキーのように、自然や人間の感情を抽象的な形で表現することに強い関心を持ちました。

2.感情の表現

ゴーキーは、絵画において感情的な表現を追求しました。彼は、彼自身の内面的な経験やトラウマ、特にアルメニアでの幼少期の体験や母親の死などの影響を受けた作品を多く残しています。この感情的な要素が、後の抽象表現主義のアーティストたちにとって非常に重要な要素となり、彼らの作品に感情の奔流を表現することが求められました。

3.象徴的抽象の探求

ゴーキーは、具体的な形態を完全に放棄するのではなく、抽象的で象徴的な形態を通じて感情や経験を表現しようとしました。彼の作品には、しばしば幻想的な風景や有機的な形態が登場し、自然界の要素を抽象的に解釈しています。このようなアプローチは、抽象表現主義のアーティストたちに「形を超えて表現する」という新しい視点を提供しました。

4.シュルレアリスムとの接触

ゴーキーはシュルレアリスム運動とも深い関わりがあり、シュルレアリスムの自動描画技法や無意識的な表現方法に強い影響を受けました。この影響は、抽象表現主義のアーティストたちにも引き継がれ、彼らはしばしば意識的な制約を取り払うことで、無意識や自動的な表現を追求しました。ポロックの「ドリッピング」技法などは、シュルレアリスムの影響を受けたものとされています。

5.画面の扱いと物理的なアプローチ

ゴーキーの絵画技法は、物理的なアプローチにも独特なものがありました。彼は絵の具を厚く塗ったり、表面に異物を埋め込んだりして、作品にテクスチャーや深みを加えました。このようなアプローチは、後の抽象表現主義アーティスト、特にヘルムート・ニュートンやジョアン・ミッチェルなどの作品において、物理的な表現と感情的な強度が結びつく道を開きました。

6.ポスト印象主義から抽象へ

ゴーキーは、初期には印象主義やポスト印象主義の影響を受けた作品を制作していましたが、次第にその枠を超えて抽象表現へと進化しました。彼の作品は、印象主義の明るい色彩とポスト印象主義の構造的要素を受け継ぎながらも、それらを解体し、新しい形態や色彩を自由に探求するものでした。この変革的な過程は、抽象表現主義のアーティストたちにとって、既存の芸術形式から解放され、自由な表現を目指す手本となりました。

結論

アーシル・ゴーキーは、抽象表現主義が発展する過程において、感情的、技術的、そして理論的な基盤を提供したアーティストでした。彼の自由で実験的なアプローチ、感情を表現する方法、そして自然や個人的経験を抽象的な形態に変換する技法は、ジャクソン・ポロック、ウィレム・デ・クーニング、マーク・ロスコなど、後の抽象表現主義の巨匠たちに大きな影響を与えました。

以下、記事を書くためのメモです。
今後、この記事はアップデートされていく予定です。

ヨーロッパの抽象作家達が苦しんだように感じられる理由

本書:82ページ
ヨーロッパの(特にフランスの)「上品な絵画(ベル・パンチュール)」という長年の伝統ー絵画は美しく贅沢なもので感覚の喜びの苗床であるという伝統ーが、急進派の道を遮るのである。

ペギー・グッゲンハイムのコレクション

ペギー・グッゲンハイムのコレクションがヨーロッパの都市を1948年に巡回しはじめるなど、新しい世代のアメリカ人作家たちがヨーロッパで展示されるようになると、その影響は圧倒的であった。

126ページ

実験的作曲家ジョン・ケージ

ケージの基本的なアイデアの一つは、観客の心に「焦点を合わせない」という考えである。
芸術家は、分離されていたり、閉じられた何ものかを作り出すのではなく、その代わり、観客をより開放し、観客自身と環境に一層気づかせるような何ものかを作り出すのだ。

ピカソの「ラス・メニーナス」「アルジェの女たち」

連作を描き発表するメカニズム

戦後、当時の日本の芸術家について

(本書16ページより。)
日本国内で活躍している「日本人の抽象絵画、ポップ、ネオ・ダダの作家については」、日本国内では重要な芸術家なのは分かるが、アメリカにおいては強い印象を与える事はできていないと明確に述べられています。ヨーロッパ、アメリカの模倣の傾向が見られると分析されています。(←これは、今後、研究していく課題で、本も注文済みで別の記事で追っていきます。

そうでもないよ。という意見も1900年代後半にはあります。

アメリカ合衆国は基本的にヨーロッパの美術業界にとっては重要なマーケットだった。「印象派」の絵画が人気。当時、パリとアメリカで美術界の主導権争いが起きていた最中、1940年代後半にアメリカから発した「抽象表現主義」がヨーロッパで認められた事が重要な出来事です。アメリカの芸術家の作品をヨーロッパの人々が、受け入れ、認めたのです。

104ページ)
1950年までにーすなわち、抽象表現主義がもっとも盛んな時期までにーバーネット・ニューマンの目論見はすでにはっきりしていた。ニューマンは、絵画の表面を構図としてよりも面として分節することを欲していた。

112ページ)
ステラは、ポスト・ペインタリー・アブストラクションに属していると勘違いしていたが、実際は他の作家と比較すると構成主義的である。ステラの関心は、色彩としての色彩、よりも、物体としての絵画に向かっている。それはおのれの権利によって存在する事物であり、完全に自己言及的な事物なのである。が、その作品はバーネット・ニューマンの作品と直接繋がっている。

113ページ)

抽象表現主義を批判する実験の試み。ジュールス・オリツキー

ラリー・プーンズ
オップ・アート

120ページ)
ポスト・ペインタリー・アブストラクションは純粋絵画によって示された様々な可能性にいわば結論が出してしまったような状態になったので、(行き詰まった?)前進することを求めたアーティストは絵画から彫刻へ移行し、様々な材料での実験的作品制作が増加した。

128ページ)
ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグの2人に共通しているので、純粋な絵画からの脱却。絵画を物体として取り扱っている。特別な意味やエネルギーを持たない旗、数字、ターゲットといった記号的なイメージをモチーフとして選んでいる。

参考

世界現代美術作家情報サイト「アーシル・ゴーキー」

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