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マウリツィオ・カテラン 壁に貼られたバナナが9億円超で落札!

キュレーターのフランチェスコ・ボナミが、21 世紀で最も輝かしい芸術作品の 1つ、マウリツィオ・カテランの「コメディアン」について解説しています。

フランチェスコ・ボナミさんの解説によると、マウリツィオ・カテランの「コメディアン」の作品は展示途中で撤去されています。鑑賞者を巻き込んだ展示状況はデュシャンの泉を彷彿させます。泉は展示されませんでしたが、議論を巻き起こしました。(フランチェスコ・ボナミは2003年のビエンナーレのキューレーターを務めています。)

2019年12月、マウリツィオ・カテラン(イタリア)がアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで発表した作品《Comedian》。当初は3つのエディションが12万ドル(約1300万円)〜15万ドル(約1600万円)の価格で販売されていましたが、ニューヨークで開催されたサザビーズのオークションで620万ドル(約9.6億円)の超高値で落札されました。作品の発表から約5年で異常とも感じる、価格の高騰です。

尚、3つの内1つは、コレクターの寄贈によりグッゲンハイム美術館に《Comedian》は収蔵されています。

マルセル・デュシャンの「泉」を思い起こさせる作品です。作品自体は現代アート市場の状況に対して批判しているようにも見えます。

9億円超で作品を落札した中国出身の中国の暗号資産(仮想通貨)関連の起業家ジャスティン・サン氏は本物であることの証明書と展示方法の説明書も受け取ると言っています。お金持ちのアートの世界は常人の理解を遥かに超えてきます。

今後、現代アートがどのような流れになっていくか楽しみです。

《Comedian》マウリツィオ・カテラン

この作品は、作品の購入証明書、展示方法を説明している取扱説明書を購入することになります。取り扱い証明書にはバナナの交換頻度、設置場所などが詳しく記載されているということです。

素晴らしいのは、作品が簡単に永遠に保存でき、保存方法も一般的な絵画作品より神経質になる必要がありません。近所のお店でバナナとダクトテープを購入するだけで作品が展示できます。

また、デュシャンの便器は工業製品(既製品)を元に作られた作品ですが、便器自体のデザインが時代と共に変わっていきますが、マウリツィオ・カテランのComedianの作品で使用されている材料はバナナとダクトテープ(日本のガムテープより粘着力が強い)。

ダクトテープという極めてシンプルな形状をした工業製品を使用されている、後の時代になっても、形状自体はそれ程変わらないと予想できるのも面白く感じます。何よりも、作品を購入しなくても、自分の家で簡単にマウリツィオ・カテランの作品を展示できます。お金持ちでなくても、誰でもアート作品が簡単に展示できる時代がやってきました。

THE ART NEWSPAPERより本人へのインタビュー記事を訳して抜粋

私にとって、Comedianはジョークではなく、私たちが何を大切にしているかについての真摯なコメントであり、反映でした。アートフェアではスピードとビジネスが優先されます。だから私はこう考えました。もしフェアに行かなければならないなら、他の人が絵画を売るようにバナナを売ってもいい。システムの範囲内で、でも自分のルールで。人々がどう反応するかはわかりませんが、これらの新しい作品が通常の鑑賞習慣を打ち破り、本当に大切なことについての議論のきっかけになればと思います。私たちは、自分たちが作り上げた非物質的な構造、社会的価値観、ヒエラルキーに基づいた会話に囲まれていますが、通常はそれを忘れたがります。まるで麻酔をかけられているかのようです。

落札価格は日本ではニュースになりますが、そんな事より。。。

落札価格もセンセーショナルでキャッチーな切り口でニュースになるのはわかるのですが、そんな事よりマウリツィオ・カテランが今年2024年に個展で発表した、新しいインスタレーション作品「Sunday(日曜日)」も面白い作品です。

米銃規制の賛成、反対と議論がされ続けているアメリカ社会にむけての作品でしょうか?鉄板に金メッキを施し、実際の銃を打ち込んだ作品です。

詳細はこちら(ART + CULTURE)さんの記事をご覧ください。ガゴシアン・ギャラリーのサイトでも紹介されています。

マウリツィオ・カテラン

マウリツィオ・カテラン(伊: Maurizio Cattelan、1960年9月21日 – )は、ハイパーリアリスティックな彫刻とインスタレーションで知られており、企画演出や出版でも活動するイタリア人芸術家である。その風刺的な手法から、「アート界のジョーカー」、「イタズラ者」と評されることも多い。カテランの作品は、美術館やビエンナーレで国際的な展覧会が行われており、2011年には、ニューヨーク州のグッゲンハイム美術館で回顧展が開催された。

ユーモアと風刺がカテランの作品の核心であり、その作風から、アート界のジョーカー、道化師、イタズラ者といったレッテルが貼られることが多いアーティスト。

代表作には、18金で造られた黄金の便器『アメリカ (America)』、隕石が直撃し、倒れた教皇を表した『ラ・ノナ・オラ (La Nona Ora)』[注 1]、新鮮なバナナをダクトテープで壁に貼り付けた作品『コメディアン (Comedian)』などがある。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

参考

Maurizio Cattelan: ‘Life is often tragic and comedic at the same time'(The Art Newspaper)
美術手帖:テランの「バナナ」がグッゲンハイム美術館に収蔵。匿名コレクターによる寄贈
Maurizio Cattelan Sunday Curated by Francesco Bonami
米銃規制、「賛成」と「反対」がせめぎ合う現場

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